佐渡の田んぼ再生記.胎動編

べつに、米を作ってお手製ドブロク『玉のぴかり』の原料米にしようというんじゃないんです。

横着ロマン派、&自己流というB型気質丸出しの舅がほぼ10年をかけて堆肥を運び込み土を作り上げた田んぼ....実際の日常管理&ご近所とのおつきあいは現実派の姑と義理の弟がこなしていてくれたおかげで収穫できていたようなものですので、姑の死をきっかけにこの3年間ですっかり荒れてしまいました。

この数年間、佐渡に帰省するたびに国道に面した何軒のも屋敷前の立派な田んぼが放棄されているのを目にして、あ、今年はここも...と、人ごとながら寂しい思いをしたものですが、やっぱり実家の田んぼがどんどん野に還っていくのが一番、生理的に悲しい。生きながら手先足先が腐って崩れていくようなそんな感じです。

かなしいぃ、かなしいぃぃい、かなしいよぉおおおお!!、と言い続けていたら、万事スロー&平和主義者の夫がとうとう動き出しました。地元で農協の指導員をしている元同級生に電話をして、委託で耕作をしてもらうための手順を教えていただき、義理の兄や弟に田んぼを再生する了承をとってくれました。あと問題は舅ですね...。

私は、慣行栽培でもなんでも、とにかく最初は田んぼであったことを忘れつつある土地に田んぼとしての機能を思いだしてもらうのが先決だろうと思うのですが、自己流ロマン派の舅が金肥はいかん!とか除草剤使うなとか口を挿みだしたら、耕作を引き受けてくれる人が見つからないんじゃないかと不安です。

自分達が佐渡に帰って実際に生活できるものなら、舅のロマンにも一理あることですし頑張りたいと思いますが、まだまだ、人様に協力してもらわないとどうにもならない段階ですので、舅が納得してくれるといいなぁと固唾をのんでる状態です。

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田んぼの草取り

今日は先月14日に埼玉県小川町『霜里農場』さんの指導の下に田植えをした田んぼの草とりの日でした。

霜里農場の無農薬栽培キャリアは38年だそうです。先月の田植えの時に見せていただいたコシヒカリの苗はポットで露地栽培した成苗で,それを36×30センチの間隔で植え付けたのですが、いくら成苗とはいえ一本取りでその間隔に素人が植えると,ホントに大丈夫かいな?と思うほどすかすかでした。

ところが,今日見ると確かに葉っぱはほっそりしたコシヒカリなんですが株の立ち方が今まで他所で見たのとまったく違います。V字型にワイルドに広がって根もしっかりしているので、(手でやる雑草とりとしては)はずいぶん楽でした。

また、いちいち捕まえたりしませんでしたが見てるだけでも田んぼの中の雑草,生き物,の種類の多さは今まで入った田んぼとずいぶん違う気がして、こんな中で育たざるを得なければ,いくらコシヒカリでもたくましくなるだろうな,と思いました。

私自身は残留農薬よりはるかに危険なアルコールを日本酒というかたちで毎晩二合づつ飲んでますので、食育に熱心な方達に無農薬、有機栽培の価値を熱心に語られても,あんまり調子良く同調できないのですが,種族の生理にあった仕方でたくましく育っていく稲の姿を見るとやっぱりちょっと感動してしまいます。でもこれって38年の積み重ねのおいしいとこ取りなんですよね。

無農薬に切り替えて土が変わったと実感できるようになるのに10年、その成果を町が認めて地域ぐるみで商品用の米を全量無農薬栽培に踏み切るのに38年です。

小売りの世界でもこんなに時間がかかるんでしょうか?10年後にどんだけ稲作農家が生き残り,どんだけ酒蔵が仕込みを続けているか?というモット怖い問題があって,10年もかけてらんないよ,と,気持ちはあせります。居酒屋の一従業員に過ぎないんですけどね。


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霜里農園で実習。

6月から埼玉県小川町の霜里農園http://www.shimosato-farm.com/で、米づくりの実習(と、いっても、月一ですのでほんのお触りと言うか見学)をさせていただくことになりました。

日本酒ファンとしていくつかの酒造会社を訪問させていただくと,酒づくりと,稲作と地域づくりというのは良くも悪くも,ほんとは一続きなんだなぁと自然に思うようになりました。

一方サービス業者の立場で言えば,酒にかかわる、飲み手、店、流通も良くも悪くもやっぱり一続きです。提供者、紹介者、仲介者として飲食店にはもっとできることがあるはずなんですが,私,最近ちょっと萎縮気味。

その点,霜里農園さんは自然農法の経験も長く,消費者との交流や地元の共同体の中での責任の果たし方でも様々な経験を積んでいらっしゃいますので、この一年の実習を通して生産地側と消費地をつなぐ飲食店の立場で何ができるのか、できるようになりたいのか,ヒントが見つけられると良いなぁと思っております。

鼻の頭の皮がむけたり,色が黒くなったりしないように強力な日焼け止めをガッツリ買い込む予定です。

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冬水たんぼ at 根知

先週末、ほぼ一年半ぶりに新潟の根知にいってまいりました。

このブログを前からお読みの方はご存知のことと思いますが、この蔵は約7年ほど前から原料米の安定確保のため米造りに携わりはじめています。私は3年くらい前から時々お邪魔させていただいているのですが、この間、ジェットコースターというかメルトダウンと言ってもよいほどの農業と酒造りを取り囲む情況変化の中で着実に未来への布石を打っているのには毎回驚かされます。

今回の訪問の目的は、この冬から試験導入され始めた【冬季堪水&不耕起移植栽培】についてお話を伺い&田んぼを見せていただくことです。

最初に用語の説明をザックリさせていただくと、

現代の一般的栽培法では稲刈りを終えたあと、地面を起こして地表の稲藁を地中に鋤き込み田んぼを乾かして冬を越し、春になってから田んぼに水を張ります。鋤き込まれた稲藁は分解されてゆくゆくは窒素などの肥料分になるのですがこの方法ですとメタンガスや硫化水素など稲の生長を阻害する物質をちょうど稲の成長期にあたる時期に放出してしまいます。

一方、【冬水田んぼ=冬季堪水】の場合は稲刈りのあと地中に根を残したまま田んぼに水を張りなおし、地表の稲藁共々水中で分解させます。水中ではその稲藁を栄養源に多量の藻類が発生し、光合成をしながら水中の酸素を増やすため稲にとっての有害物質が発生しにくいという利点があります。

また【不耕起移植栽培】というのは文字通り耕すことをしない栽培方法です。稲刈り後の稲藁の鋤き込みもしなければ、田植え前の田起こしもしません。地中に残った前年の根っこが朽ちて水や空気の通り道になるため、数年この栽培法を続けると、この根っこの遺物が積み重なってスポンジ状の土壌ができ地力がつくと言われています。

また、この栽培法では苗をきたえることで、稲が本来持っている環境適応力を最大限に引き出すことと、施肥のタイミングが非常に重視されています。(タイミングをはずさないことで肥料、農薬使用量を必要最低限に押さえるのです。驚くべきことに有機肥料の代表格である畜糞堆肥を使いません!)


生物の多様性に支えられて、その土地その土地が自力で自らを耕し土壌を作り上げていく、その仕組みの歯車の一つとして稲作が組み込まれている..とすら言ってもいいかもしれません。


蕗の薹がぽこぽこ吹き出た畦を歩きながら、この蔵のモットーである【根知谷産五百万石の特性を生かした酒づくり】はより一段深化して、【根知谷の環境特性を生かした五百万石づくり】というレベルに踏み出そうとしているのだな、と思いました。

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いずみ橋さんの取り組み

先週、神奈川のいずみ橋酒造さんからお中元商品のご案内と、今年度の米づくりについてのお知らせがとどきました。いずみ橋さんは米づくりから含めた一貫生産をする首都圏に最も近い酒蔵さんの一つだと思います.

ご案内によりますと、今年から地元相模酒米研究会と協力して、冬季湛水不耕起栽培(いわゆるふゆ水田んぼ)の研究に乗り出されたそうです.この栽培法は、農家にとっては省力化、除草剤&農薬などにかかるコストの削減、また生態系の多様性を復活させるとして環境面からも注目が集まりつつある栽培法です。

が、ふゆの間も田んぼに水を張るため近隣の農家の方々と水利権の面で調整が必要ですし、多くの場合、専用の田植機が必要だったり、また実際の圃場の保水力とこの栽培法の相性など、その土地その土地にあった実施法が安定するまでクリアしなくてはいけない課題がたくさんあります.また、移行して数年間は収量、品質ともに慣行栽培の時より不安定になり易いので移行するには充分な段取りと、企業としての余力がもとめられます.

そのため、(昨年滋賀の竜王町の酒米部会でもお聞きしたことですが)中山間地域の小規模な事業所でこの農法を採用するところは比較的多いのですが、相模平野のようないわゆる穀倉地帯で団体でこの栽培法を定着させるのは珍しいことだと思います.

一筆ごとの理解、一年ごとの体験の世界で、すぐに結果がでるものではありませんが、こう原油価格が高騰してしまうとこの栽培法も環境面だけでなく経済的にも見合うようになるのかもしれません。産地を抱える地方の行政が農機具購入のための助成金の予算をもうけるだけでなく、販路をコーディネイトするなど高い位置からの広い視野でシステムとしてこの栽培法を支えてあげることができれば、より普及は早まると思います.

もちろん私達一般消費者にできる一番の応援は、『買って飲む』の一言につきます.
いずみ橋さんの酒は一般に糖分の少ない引き締まったタイプの製品が多いような気がいたします。
夏に冷やで飲むのもいいでしょうし、人によっては自宅で数年寝かせてから飲む方もおられるようです。


以下に、この栽培法のメリットは不耕起栽培普及会のHPを御覧いただくとして、これが抱える課題を知るための資料を添付しておきます.

多面的機能発揮事例としての冬期湛水の実態http://nkk.naro.affrc.go.jp/library/newpanel/pdf/sougou/panel%207.pdf

滋賀県における取り組みが実際の市場でどう評価されているか?の調査結果.
http://www.ses.usp.ac.jp/fw/down/fw2_2005/2h.pdf

以下引用

消費者が米を買う基準はグラフで示すように「いつも食べている米70%、安い米2
0%、高くても安全な米10% 」であり、例え少々値段が張っていてもいつも食べている米を購入する傾
向が消費者に強いため、この割合の中に環境こだわり米を割り込ませるのは中々難しいということだっ
た(グラフ8.3.2-1 参照)。さらに、販売者があまり「環境」というキーワードに興味がないこともこだわり米
が売れない理由の一つになっている様である。
「店で販売できる量が一年間で安定しないために、販売業者もこだわ
り米を買ってくれない」というものだった。このために、販売者側が絶対量が少ないために店頭に並べら
れるのが不定期または不可能となり、こだわり米を購入する消費者でも毎回こだわり米を手に購入する
ことができず、こだわり米が世間に浸透しない、リピーターが生まれないと考えられる。
(3)環境こだわり米を売るための取り組みとして
こだわり米を売るための取り組みとしては、パールライス滋賀は今生協の勉強会への参加、店内キャ
ンペーンの実施、ラジオやチラシでのPR、イベントの開催などを行っている。消費者は「農薬」という言
葉に過剰反応する傾向があり、今後はこだわり米は普通の米に比べて特別おいしいわけではなく環境
にやさしいということを正しく理解してもらう必要がある。また、業務用、外食産業へは益々増加する可
能性があるのでもっと売り込んでいく必要がある。さらに産地ごとに農薬が違うために表示が大変で今
はシールで対応しているがコストがかかるために栽培方法の統一化が必要である。
(4)まとめ
最後に「こだわり米は儲かるのか?」という質問に対して「直接的に儲けは発生していないが、いろいろ
な米を扱っているということが宣伝できていることから言えば間接的に儲かっている。こだわり米は儲けが
発生するまでの生産量に達していない。」ということだった。
以上のヒアリング調査から僕たち流通関係グループは、こだわり米はまだ消費者に浸透しておらず「い
つも食べている米を買う傾向が強いために新しくコーナーに置かれた『こだわり米』に手が伸びない」と
いう現状がわかった。また、販売者側から見ると「絶対量が少なく、量も安定しない米は店頭に並べるこ
とが出来ない。」という言い分があることがわかった。以上の結果から、環境こだわり米が消費者および
販売者に浸透するのにはまだまだ課題が多く残っている、

(引用終わり)

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【取り】と【囲い】のちがい...ふたたび

先日【斗瓶取り】と【斗瓶囲い】の違いについてお尋ねした蔵から丁寧なお返事をいただきました。急ぎの質問ではありません,とお断りしてありましたのにずいぶんと早くご返答を頂戴しましたのでびっくりと言うか恐縮してしまいました。黒牛さんのブログとも内容がかぶりますが,同じことでも違う表現で読むとより全体像が分かると思いますので以下引用させていただきます。(中略等の編集の責任はすべて私にあります)

お問い合わせの件ですが、「斗瓶取り」というのは、作業的には袋吊りしたもろみから垂れてきた原酒を瓶に受けるものですから、ヤブタで搾ったものを斗瓶取りするというのは、ありません。ただし、ヤブタで搾ったものを「斗瓶囲い」することは当然としてあります。(略)袋吊りという手法は、極めて特殊なものであり、大変に贅沢というか、恐ろしいほど無駄の多い搾り方です。従って、鑑評会用出品酒のような、ハイエンドな部類での闘いに用います。一般に商品化するなどということは、本来あり得ません。

しかし、この搾り方のお酒を味わってしまうと、同じもろみであっても、これほどに違うものかと私も思います。それほどに質感が違います。本来的には、1本5万円くらいはしてもいいものです。商品化できないほど稀少なものなので、酒蔵からはあまり出ませんし、その価値が正当に評価されることもありません。それが現実です。

原料米とか精米歩合など、製造のスペックからしか日本酒の価値を見ようとしない業界ですから、現実は厳しいのですが、少しずつでもそうした呪縛から解き放たれた評価が出ようとしています。引き続き尽力して行きます。(引用終わり)

とのことです。ご返答をいただいたこの蔵では袋吊りの製品をぐっと絞り込んでいらっしゃいますし,マイミクの篠峰さんの日記を読ませていただいてますとあちらではずいぶんがんばって袋吊りを敢行なさっているようです。このように希少すぎて本来的な評価を当てはめられない【袋吊り斗瓶取り】もあれば、クレーンを使ってトン単位で吊ったものであっても袋で吊ってあれば商業的には【袋吊り】と称してしまえる...そういう商品もあります。もちろんクレーンを使ってたってぎゅうぎゅう圧力かけて
絞ったのよりは、やっぱりずっときれいな味がするのだと思います。上には上がありますし,そこそこにはそこそこの幸せがある、ということですね。

でも今回のことで,似たような言葉であっても,その作業の目的とするものがまったく違うことが分かりました。生産現場の人にとってはあたりまえすぎて,特に意識もなさってないのかもしれませんが,
私たち一般人にとってはどの言葉が情報が,自分の求める香味,質感を保証するのか分からないのはちょっと気持ちの悪いものです。

まぁ,なんぼ釣書が豪華でも実質がともなわない酒のために語る体力も善意も私は持ち合わせていませんので,これからも,すばらしい酒に出会った時だけ,それを裏付ける釣書の意味を,正確に,お客さまにお伝えできるよう備えだけはしておく所存でございます。

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花山 訪問記

昨日はどういう運命のいたづらか,天の差し金か分かりませんが一介の居酒屋従業員の私が地方銘酒専門卸【花山】http://www.nipponnosake.com/hanayama/index.htmlの大澤社長にお話を伺うことが出来ました。

あかね屋は地方の小さな居酒屋にすぎませんし,私もそこの従業員にすぎませんので,なんといいますか,おじさま方の連合や、大きな組織の力に対するに対する警戒心と,同時に足の鈍さをじれったく思う気持ちがどうしてもあって,インディペンデントな酒販店さんからいろいろ情報をいただくことはあっても,大きな会というのは遠い存在でした。(もちろん試飲会は参加させていただいて,その感想をもとにおすすめの酒を決定したりはしていましたが...)

でも,こんな言い方してはいけないかもしれないんですけど昨日は....『たのしかった!』の一言ですね。スケールもキャリアの長さも桁違いなんですけど,なんだか先達にお会いできた気がいたしました。いろいろ考えさせられることも多くて,ちょっと消化するのに時間がかかりそうなんで,お聴きしたことはこれからちょっとづつ引き合いに出させていただこうと思います。

それにしても、たのしくって,嬉しくって,お会いできてよかったな〜て.....
これじゃ何の報告にもなってないか...すみません。(汗)


船長、ありがとうございました。


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亀甲花菱

今日は埼玉騎西町にある亀甲花菱醸造元、清水酒造さんの見学に夫と出かけてまいりました.

噂の巨猫『にゃ〜君』にはじめて会えました.パバロッティのような恰幅&すばらしい手触りの雉虎猫です。鳴き声もまさしく黄金のトランペットを思わせる美声です.白からすも夏場イタチに襲われた怪我はすっかりよくなって、真っ白でピカピカして元気そうでした.

今朝方、留仕込みをしたばかりの蒸し米の香り、つぶつぶ感がよくわかる地元向けの普通酒の醪、一月末に仕込んで香りを立て始めている大吟、純大吟の醪、私が毎年楽しみにしている美山錦の純吟、若水の純吟などなどの醪タンクをのぞかせていただきました。

中で麹がねんねしている麹室に入らせていただくのは今回が初めてです.普通酒用の麹でしたが
リアルにお布団をかぶってベッドの上で寝てました.猫のにゃー君は麹室があったかい事を知っているので麹室の中に入りたくて入りたくて寒い蔵の入り口で辛抱強く待っている事があるそうですが、麹室は二重扉で守られていますので、まぁ、侵入は不可能です.ここの二重扉は温度保持のためだけじゃないんですね.

清水酒造は出品酒も、地元向けの普通酒もすべて埼玉C酵母を使っています.米の品種、精米歩合はそれぞれ違っていても、酵母は同じです.でもタンクごとに違うんですねぇ風味がやっぱり。
もっともっと仕込み本数が多くて、人手も多い蔵ならいろんな米、いろんな酵母を使い分けてノウハウを蓄積していく方法もあるのかもしれませんが、要素をしぼって、その中で経験と理解を深めて行かれるのも一つの選択です.花菱の酒にクラフトマンシップを感じるのはそのせいかも知れません.

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品種、品質、そして産地。つづき

言いたいことならどれくらい〜あとからあとからあふれてく〜♪のがこの品種、品質、そして産地に関する話題です.(年がばれるなぁ)

前回のつづきでまた、【根知男山】を例にとって説明させていただきます.この蔵は昨年から「根知谷産五百万石の特性を生かした酒造り」を、明確に言葉に出すようになりました.

米づくりから一貫して地元にこだわろう、という姿勢を打ち出す蔵がここのところ同時多発的に増えましたね。日本の農業も、酒蔵も、各地の地域産業も、こうやって自己組織化をしなおさないとどうにもならないくらい弱ってるからだと思います.そうした中でいろいろな魅力的な酒にであいます.が正直に言わせていただくと、それらのほとんどは、個人技の魅力です.蔵の味、の魅力です.人が、会社が、前面に出ているのです.ですから技術としての完成度、インパクトはとても高いのです。

人が、会社が、自分達の築き上げてきたスタイルを見直すのはとてもむずかしい。あって当然、居て当然と思っているものを大事に【守る】ことはできても、その中に潜む可能性を【再び見つけ出す】のは「モチベーションをもて、」と言われたって難しいのはどこのご家庭でも夫婦レベルで経験済み、のことと思います.

私がこの蔵を高く評価するのは、それをやる、と明言して、行動を起こして、出した結果が今年のこの酒だからです.この酒の中には、まだ、多分、技術的に不確かな、改善することのできるはずの点がいくつかある.でも、この酒の中に『小さなエゴ』はない.

あるのは、今年度の、この産地の、この品質の、この品種のもつ可能性に対して、自分たちの存在感を消して、あくまでも競っていこう、という無私の姿勢です.ある意味恐れを知らない、非常に勇気のある姿勢です.なんぼでも、もっと、いわゆるおいしく取り繕えるのに....です。

産地の特性を生かす.(今の段階は生かし始める、くらいかな)というのは、ちゃんと取り組めば、リ.ナッシメント(再誕生)と言って良いくらい、ドキドキできることです.それが分かったから私はうれしいのです.

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辻善兵衛

栃木の真岡にある辻善兵衛商店さんのお作りになる純吟系は私の作るお惣菜にドンピシャで、私は個人としては、辻さんのお酒さえあれば、日常はな〜んらストレスを感じない平和な生活が送れるのですが、仕事柄個人の嗜好を他人に押し付けるわけにもいかず、いろいろさすらわなくてはいけません.まぁ、いいんですけどね。

今日は、腹痛をこらえつつ辻さんの今シーズン初物を買ってきました.五百万石(たぶん地元産)純吟あらばしり直汲です。店頭で飲んだ感じでは辻さんのとこの生原酒でしばしば感じる力強い麹香が抑えめで、ぽっちゃり瑞々しい印象でしたのでちょっと意外な気がしました.

今、仕事が終わって、ほかの新酒の印象と比較しています。黒牛が開封10日を過ぎ味にまとまりが出始めてるので、ダイレクトな比較ではありませんが、黒牛がしっかりした酸に支えられた芯のある味わい、麹の青々しさとフジリンゴのようなバランスのよい甘い香り、に対して、この辻さんの五百万石純吟は野に咲く花のような飾り気のない甘み、リンゴのような酸味、新酒らしい微かな渋味、全体として、さらさらとパウダリーな軽やかさを感じます.房島屋純米おりがらみ(麹米:ニシホマレ掛け米:福井産五百万石)は昨夜飲みきってしまったので直接比較はできませんが、あちらはもうちょっとクリーミーな感じがありましたし、甘酸っぱさの印象はリンゴはリンゴでも、黄色の香りも甘みも強目のタイプに感じました.

どの酒も新酒の段階で楽しめるように工夫されてます.

辻さんにお会いしたとき、辻さん自身もあまり酒に強い方ではないので、アルコール度低めで原酒と同じくらいの飲みごたえと味わいのある酒を作ってみたい、とおっしゃっていたのを記憶しています.
私もあんまり強くないので、早くそういう製品が完成するといいなぁ、と心待ちにしています.

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高温障害と心白米

高温障害、という言葉はちょっと原料米の品質に興味を持ち出すとしょっちゅう耳にするようになります。近年、温暖化のせいか全国的に一等米比率が低下する傾向が見られます.等落理由の5割は米粒が白濁したり(白未熟粒)、粒が痩せて重さが不十分になること(充実不足)です.


白未熟粒が白く濁って見えるのは、デンプン粒間の隙間によると考えられています.白未熟粒は白濁部の位置によって、乳白粒、心白粒、腹白粒、背白粒、に分類されています。

先日から読んでいる酒米研究会懇談会資料H18版に、NARO九州沖縄農業センター 温暖化チームの森田さんが以下のような報告をなさっていました.

H16年全国連絡試験における15地点におけるコシヒカリ出穂後20日間の平均気温と白未熟米粒歩合の関係を調べると、(品種や、栽培条件によって程度は異なるため注意が必要ですが...)出穂後4〜12日頃の高温(36/31℃)では死米、4〜20日頃では乳白粒、16〜24日頃では背白粒がそれぞれ多発し、登熟期の日平均気温が24℃で心白粒がわずかに発生し、27℃で背白粒と乳白粒が発生し始め、背白粒は30℃。乳白粒は33℃、死米は36℃で多発する。つまり、玄米の横断面から見てリング状に白濁する(乳白粒)は登熟初〜中期の高温、背部維管束周辺が白濁する(背白粒)は登熟中〜後期の高温、玄米基部の未熟粒は、登熟最後期にデンプンの蓄積が阻害されて発生すると考えられるんだそうです。

旱に不作なし、の言葉は収量面にはあてはまっても、品位面では当てはまるとは思えないなぁと思いました.

また、これまでの試験により、デンプン合成酵素の活性が、開花後9〜13日の穂に対する高温処理で明らかに低下し、処理終了後も回復しなかったこと、また、登熟初〜中期の高温により、糖分の輸送経路である珠心表皮が早く退化すること、高夜温が続くことで粒重増加速度が落ちて軽粒化すること、などが報告されてはいますが、実のところ玄米に流入した蔗糖がデンプンに合成、蓄積される過程のどの部分が滞っているのか?、なぜ高昼温より高夜温の方が悪影響が強いのか?、などこれから理由を調べなくてはいけないことは多いそうです。


高温障害とは違いますが、酒造上望ましいとされる心白が、稲の種子という視点から見れば一種の発達障害である、というのはなんか当たり前なんですけど改めて、そうかぁ、という気がします.教科書で習うよい心白を出現させる条件、夜間はすずしく、日中は急激に温度が上昇、というのも何らかのしかた、度合いで種子の成長にアンバランスが起きてるってことなんですね.

特等米.特上米、というのは健全な種子の面と、発達障害の面がうまくコントロールされて一粒の中に集約されてる米が一俵の中に80%以上集まってるっていう状態なんだ、と思うと、ちょっとくらくらします.


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米タンパク質と清酒醸造

今日の日記は、過去三年間に酒米懇談会で発表された講演からの要約です.

利き酒師の講習では高精白の目的は、ぬか部分に含まれる過剰な脂質、タンパク質を除去し、それにより雑味の少ない酒を得るため、と習ったことと思います.では、米タンパク質はどんな風に米粒の中に分布しているのでしょうか?

まずは近畿中国四国農研の稲育研究室の飯田さんの資料から.
白米にはグルテリン、プロラミン、グロブリン、アルブミンの4種類に分類される貯蔵タンパク質が約6〜8%の含まれています。タンパク質はデンプン粒と粒の間の空間にあるプロテインボディーⅠ(PB-Ⅰ)、プロテインボディーⅡ(PB-Ⅱ)と呼ばれる2種のタンパク質顆粒の中に貯蔵されています.

全タンパク質の15〜18%を占めるプロラミンと16kDaグロブリンはPB-Ⅰへ、50〜60%を占めるグルテリンは8%を占める26kDaグロブリンとともに、PB-Ⅱに貯蔵されています.PB-Ⅰは醪内の酵素では消化されにくく、PB-Ⅱは容易に消化されます。ですから私たちにとって主に関係のあるのはPB-Ⅱに蓄積されるグルテリン類と言えるかもしれません.

つぎに、PB-ⅠとPB-Ⅱが米粒のどこに集中しているか?ですが、京大大学院農学研究科、遺伝子工学研究室の増村さんの資料によると、PB-Ⅰは米の外周部、それも背側に多く、PB-Ⅱは米粒の内部つまり胚乳細胞の内側に多く分布しています.実験によると40%以上の高精白米であっても貯蔵タンパク質は一定量含まれています.酵母の栄養成分として一定量のタンパク質は欠かせませんから、貯蔵タンパクの質、量、割合、などが大事なんだろうと思います.

そのため、酒類総研ではH18〜22年の特別研究課題として米タンパク質と清酒醸造について検討しています。情報技術支援部門の橋爪さんが、その途中経過を報告なさっています.
清酒醪における窒素成分の挙動は、原料米の窒素の約55%が溶解し、清酒に30〜33%酵母に22〜25%移行したものと推測され、清酒に移行した窒素成分のうち44〜47%が遊離アミノ酸、残りの大部分はペプチドと思われます.

また、蒸米消化液中に蓄積する高分子ペプチドの由来を調べる実験.(単離したPBを25%のグルコースと共存させ米麹酵素で消化すると、高分子ペプチドが蓄積され始める)では、大部分がイネグルテリンの酸性サブユニットに由来し、N末端に清酒の雑味成分と言われる疎水性ペプチドをくっつけていることが分かりました。この高分子ペプチドに由来する雑味成分は活性炭処理で容易に除去できます.
最後に、精米歩合の違いによる高分子ペプチドの蓄積レベルの比較ですが、90%と80%の間には、各品種とも大きな違いがありますが(90%の場合、タンパク質の消化が進んでおらずどの品種でもペプチド類の蓄積は低いです)、80〜40%の間にはそれほど大きな差はありません。むしろ品種の違いによる差の方が明確で、山田錦は高分子ペプチドの蓄積レベルが明らかに低く、しかも消化時間の経過とともに早くレベルが低下しており、山田錦の酒造好適米としての高評化に関連がありそうです。

と、まぁ教科書ではあっさり2行ぐらいで片付けられてる分野ですが、まだまだ分かんないことってたくさんあるんですね.これから醪におけるこれらペプチドの消化と苦みペプチドの生成について研究が進むようです.

サービス業者の立場から言うとごっつい苦みは願い下げですが、アルコールの苦みとは別の、繊細な苦み要素というのは料理と合わせる時、生きてくる場合が案外多いです.居酒屋従業員のおつむでは、あの繊細な苦みがなにに由来しているのかよくは分かりませんが、米の成分に由来する苦みもあれば、酵母の自己消化に伴う苦みもあると思います.どうせやるなら、不快な苦み成分と快適な苦み成分の違いや閾値まで出してくれたら体験知と照らし合わせてな〜るほど、っておもしろいと思うんですけどね.

追記:飯田さんの資料によると、低グルテリン米を用いることでアミノ酸度の少ない特徴のある酒ができることが確認され、特許も取られているのですが、タンパク質の消化性は酵母の発酵にも大きな影響を与えるため、通常の醸造手法では利用が難しそうです.高精白の時間的、物質的ロスを減らしながら、なおかつ、現在の嗜好の主流である淡麗な味を追求ていく...大事なんですね.びっくりです。
こんな長期の研究して、新たな設備投資して、原料米確保して利益あげなきゃいけないんですから大変です.

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メーカーのサイト

今日の黒牛さんのブログも、これからの日本酒市場を考える上でおもしろいと思います。
http://fudansai.air-nifty.com/fudansai/
私は仕事柄、いろんな日本酒メーカーのHPをチェックします。建前80%としても、少なくとも商品ライン、立地がつかめるし、思いがけなく蔵元のブログがおもしろかったりするからです。でも、直接蔵から商品を購入することはほとんどありません。また、リンクに張られている酒販店にいきなり体当たりすることもあまりありません。

代わりに、蔵に直接、個人的に一番信用している店をおたずねします。メールや、FAXで注文取り寄せをするので立地はほとんど関係ありません。理由は別に酒販店さんの顔を立てているわけでなく、蔵が信用してる商店というのは、何らかの個性、スタンスが際立っている場合が多く、しかも、その蔵のハイライト、ともいえる商品をKEEPしていることが多いからです。逆にいうと、妙な小売店を紹介された場合、私は、『あ、この程度のつきあい方を小売店とする蔵なんだ』と烙印を押します。こういう蔵について話しだすと、どんどん言葉が鋭角的になっていきますので、深入りはしませんが、希望の持てることに私がお尋ねした蔵のほとんどは、私が伺っても、確かに良い、と思う店を候補に挙げてくださいます。

こういう酒販店のすばらしいところは、店自体が一つのインデックスとして機能していることです。
真っ当な蔵と真っ当な付き合いをしてる酒販店とつきあうと、芋づる式に別のいい蔵を発見できる可能性が高いのです。蔵元に、ほかにいい蔵あったら紹介してください、なんて、聞けないでしょう?

だから、私が一般の方にお勧めするメーカーのサイト利用法は、まず蔵元にこっそりメールを送り、一番信用してる酒販店をたずね、その酒販店が一番プッシュする商品を買って蔵元と酒販店の良心を調べることです。ちゃんとした酒販店なら、今度はおいしく飲める店をおしえてくれるでしょう。

と、いうわけで、メーカーのサイトで使える情報というのは、突き詰めていけば商品カタログと、メールアドレスだけ、と言えるかもしれません。あとはお見合いで渡す釣り書きみたいなもんで、当たるも八卦、当たらぬも八卦といったところです。

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酒米研究会、つづき

休日もへったくれもなく夫が会社に行ってしまいました。こんなにいい天気なのに...。

小人閑居して不善をなす...、で、家事もせず酒米研究会から送ってもらった資料を読んでいます。べんりですね〜。いままで関連機関からチョボチョボ集めていた資料(しかもダイジェスト版)がここにアクセスするだけでまとまって読めるんですから。

でも、私のメールの相手をしてくださった方の名前がどっかで見たことあるなぁ、と思っていたら、エヌリブに「米のでんぷん構造と酒造適正」という文章を寄稿なさっていた奥田将生さんでした。てっきり専属の事務員さんがいるのかと思っていたら、醸造技術基盤研究部門の主任さんが管理してるんですから、人手がないんですね。あんまりアホな質問をして迷惑をかけないようにしようと思いました。でも自分でアホ、と分かっていたら自粛するんですけど、たいていその時点ではアホである、と認識できてないから質問しちゃうんですよね、言い訳か...。

ともかく、読んでいて高温が玄米品質に及ぼす影響〜画像診断による玄米充実不足の評価〜。これなんかは先日竜王町の酒米部会の田回りにくっついてみせてもらった玄米の形状と心白の入り方、を思い出しながら具体的に把握できたので、おもしろいな、と思いました。

あとは、米に含まれるタンパク質に関わる一連の研究発表ですね、これなんかは原料米の特質と、私たちが感じる香味の特質とが比較的ダイレクトにつながっている分野です。いくつかの機関がそれぞれのスタンスで研究発表をしているので、それぞれのポイントが整理できたらここに書きます。

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酒米研究会

全国の酒米の特性、品質について情報を蓄積している機関はないのか?調べていくうちに、酒米研究会につきあたりました。

酒米研究会は、原料米の酒造適性を総合的に研究すること及びその年に使用される原料米の性質を早期に把握し、その原料米に適した酒造管理を行えるようにすることを目的としており、酒米研究会総会及び酒米懇談会の開催並びに原料米の全国統一分析を中心として活動を行っております。

 また、本会は酒類製造技術者のみならず、育種・栽培関係者、米に関する研究者等広く酒米に関心を持つものも会員として受け入れております。現在会員数は、個人272名、組合等3組織からなり、また全国30支部において酒米の研究調査を行っております(HPトップからの引用)

私が最初に考えていたようなランキング的な情報整理ではなさそうですがおもしろそうです。

資料請求をしたら、「当研究会は、その年の米の出来映えがどうかということと酒造に適する米の何が大事なのかということについて、米の成分分析したり、講演会を開いて情報交換を行うための研究会です。簡単にいうと、清酒造りの研究の一部です。」という文章とともに、17年度〜19年度分、三冊も資料を送ってくださいました。まだおもしろそうなとこしか読んでませんが、正直、大変おもしろい。分かんないことがたくさんある分野って、どきどきします。

何事もそうですが、入門編というのは相手を安心させるためにおおざっぱな所で、仮説を事実として断言しがちなものです。でもほんとはグニャグニャしてるんですね。事務局の方の言では原料米については清酒造りにおける微生物以上に分かっていないことが多いそうです。そりゃそうですよね、時間も、環境要素も格段に多いのですから。

私はサービス業者ですから、一にも二にもまず味見、感覚的な所から情報を整理していきますが、こうやって、異分野の情報整理法と突き合わせると、整合する所と、もう一回体験し直さなくっちゃいけない所が出てきそうです。と、いうわけで、許可さえおりれば入会する予定です。

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差別化と需要拡大

今回の黒牛さんのブログはサービス業者にとって、示唆にあふれるものです。
http://fudansai.air-nifty.com/fudansai/
引用初め)
差別化と需要拡大は違うのである。個々のメーカーなり流通関係、広告関係、技術等関係者は、差別化して自社あるいはある群のブランド価値を大きくするために動く。経済学でいう合成の誤謬のようなもので、けっきょく理屈っぽいマーケットにしてしまって、ますます需要を減少させていく。ぼろぼろ剥がれ落ちる市場の内側は、マニア的方向を追求する層と価格追求層に二分していく。本来育成していくべきは、少し嗜む、どうせ飲むなら、ワインや焼酎より各地の地酒を飲みたいという層なのだ。(引用終わり

私なども『日本酒の多様性を守る』『お客さんの求めるものを最優先』などと口では言っていても、いざ仕事となると、日本酒になじみのない方を最初の一撃で参らせて、虜にするような完成度をついつい求めてしまいますし、そこそこ良心的な製品よりは、【時分の花】を最良の状態でお客さんに楽しんでいただきたいとおもってしまいます。

力入り過ぎですよね、もっと自然にお客さんの懐にも、酒蔵の懐にとっても持続可能なクラスの酒をもっと積極的に評価する必要がありそうです。とは思いつつなかなか自然体にはなれません。青いなぁ、われながら。

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絵にならない研究

以下は清酒醸造における高水分α化米&無洗米、利用の可能性についての報告です。

http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/kigyoushinkou/yosan/teiankoubo/H15BrandNippon/12_Kamine.pdf

http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/kigyoushinkou/yosan/teiankoubo/H16BrandNippon/02-Satake.pdf
絵になる研究、ならない研究ってあります。省力、省コストの工夫なんてのは絵にならない最たるものです。でも作り手にとっては大事なんですね。飲んで問題なくて、省力、省コストがちゃんと商品価格に反映されるなら、文句のつけようがないですね。

お客さんのなかには文句のつけようのないものを求める人と、ほめ讃えずにいられないようなものを求める人がいるのですから、私達サービス業者が自分のベロで確認した上で、そこを間違いさえしなければいいだけのことです。

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売り先のないものは作るな

農業食品産業技術総合研究機構(以下NARO)の西日本支部は中山間部における稲作の立体的な循環システム作りに力を入れています。省力化、安定多収、畜産業との連携...
たとえば、これはたまたま飼料用で酒米ではありませんが、中山間部の水田機能を守るために稲を栽培し、畜産で出た堆肥をまた田んぼに戻し...というサイクルを支えるための研究の一部です。いかに田植えを省力化するか?の研究です。http://wenarc.naro.affrc.go.jp/scene/200605/scene_20060519.html


最近この手のHPをよく読みます。自分の売ってる物(日本酒)の源流をさかのぼるためです。農業分野で、工業分野で、研究分野で、私のいる生活排水にまみれた河口付近なんかとは段違いの、高等な目的を掲げた純粋な研究、探求が行われてるんですね。むかしNHKで黄河源流の星宿海の映像を見て感動しましたが、そんな感じです。小さな独立した空を映すうつくしい水たまりの集合です。でも、星宿海の水たまりと、日本の農産物加工品(酒を含む)の源流にある水たまりの大きな違いは、各水たまりどうしが連結するための水路があるかないか?です。

トーシローの私から見て、各研究機関、現場、は出力が大変弱い。組織内で生態系が確立しちゃってるからです。今回引き合いに出した例は農業と畜産の連携の一部ですが、産業としては、省力で、地域内で循環できるシステムで生産した牛肉、牛乳が市場で輸入物に負けないで、ガッツリ売れてくれなきゃ、どうにもならない。研究機関どうしの連携だけでなく、流通、サービスのプロたちともっと連携しなきゃ宝の持ち腐れです。私は一介のサービス業者にすぎません。だから、売り先のないものは作るな、とは口が裂けてもいいませんが、最終的な売り先の開発を後回しにした『効率の良い生産』研究なんてはたして成立するもんかね?!と思わずにいられません。

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科学の目

独立行政法人、農業.食品産業技術総合研究機構(NFRI)のHPを見ていたら、ワイン、日本酒の原料品種を特定する技術が開発されたそうですね。http://nfri.naro.affrc.go.jp/research/press/070809.html
日本酒は原料の加工度が高く、麹菌や、酵母のDNAも混入しているため、今までDNA鑑定は難しかったんですが、原料米固有のDNAをうまいこと精製、増幅させるできるようになったみたいです。ゆくゆくは最近輸入が増えつつある、日本酒における原料の 米品種が判別できるなど育成者権の保護するための検査基準としての利用を目指すようです。

実験ではコシヒカリ100%使用表示の酒が、実は全然コシヒカリを使ってなかったり、純米酒が純米でなかったり...結構身も蓋もない結果が出てるみたいです。が...この技術もまだまだ課題があって、混米されてると使えないんだそーな。麹米、掛米で品種が変えてあることはざらですが大丈夫なんでしょうか?。酒匠ukokiとしては、DNA鑑定などに頼らずともベロ一本で原料米の品種のみならず、産地さえも言い当てることができるほどの研鑽を積みたいものです。(法螺)

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歴史のお勉強

伊丹酒造組合のHPに載ってる歴史記事は、(文字組がとっても悪くて、読む気がちょっと萎えますが)奈良、京都、兵庫、近辺にある醸造地の盛衰の理屈をざっくり知るのにはお手頃な記事だと思います。http://itamisake-kma.jp/sake_la/index.html

日本各地に、灘、伏見と並ぶ三大銘醸地の三番目、というのがあります。三番目はいろいろあるんですが、上の2つはまず動きません。地酒、地酒、といったところで、現在でも日本酒の総生産量の40%超が兵庫県と京都府でつくられてるんですから、ここの盛衰史を押さえると日本酒で金儲けをするのに必要な条件がわかります。

歴代の大醸造地を支えた共通条件とはずばり、1、原料が何らかの方法で安定的に大量に確保できること。2、消費地への物流の太いパイプがある。3、革新的な技術を有している、4、良質の水が大量に得られる。です。

水は別格としても、主原料の米は思いっきり農産物なのにどうして産地のブランド化が進んでないのかな?不思議に思ってましたが、物流網の発達、技術革新、が歴代の大醸造地を支えていたこと、また経営と醸造の分業がはっきりしていたこと..などの歴史的背景がその原因だ思います。でも、これは経営的な戦略にもとづく価値観で、国内醸造酒文化を有り体に眺めた上での価値観ではありません。

日本酒を有り体に眺めると、関係ないと思っていた事柄がパズルのように組み上がっていくおもしろさがあるのに、もったいないはなしです。

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秋の田んぼでおもうこと。

何度も言いますが,私は町の子なんでまるっきり農作業には弱いんです.戦争とかになって田舎に疎開させられたら真っ先にいじめられるタイプですね.でも酒は好きなんで愛する酒に関わることなら何でも知りたい...。愛はすべての困難を乗り切る...んだそうです,本当でしょうか?自信はないけど、とりあえず行けるとこまで行きます.

今日の話題は田んぼの冬場の管理です。
先日、竜王町の田周りを見学したときには既に酒米を残してほとんどの田んぼで刈り入れがすんでいました.わら株を焼く煙がそこここでたなびいて冬田んぼへの手入れがおこなわれていました。松の司【AZOLLA】用の田んぼは除草剤を使いませんから,皆さん毎年雑草との戦いではご苦労なさっています.

私)「冬水田んぼっていうんですか?冬の間も田んぼに水を入れておいて,雑草を駆逐する方法があるみたいですけど,竜王町は冬の間どうやって田んぼを管理してるんですか?」

酒米部会会長の北川さん)「ここらは土地が低くて水はけが悪いから,冬の間畝立てして風を当てないと土壌が育たない.それに、雑草がなくなるのはいいんだけど、土が柔らかくなって今の機械が入らなくなるから.....元々山間部とか一枚一枚の田圃の面積が小さくて手作業しかない所にはいいけど、これだけの面積をあの方法ではやれない」

私)「絵にはなるけど...」

北)「(笑)そう,絵にはなるけど、大変ってこと」、とのことです。

冬水たんぼ&不耕起栽培関連のHPをみると、滋賀県は琵琶湖の環境保全のために、(春先の代掻き時の排水が汚染の大きな部分を占めている)代掻きのいらない冬期堪水&不耕起栽培を推進していく姿勢らしく、不耕起栽培専用の農機具購入の援助などを検討しているようですが、不耕起にきりかえて商業ベースにのせられるほどの品質まで作物をもっていくのに数年かかりますし、援助があるにしたって専用の農具などを購入して償却していくには,あまりにも米の値段が安いし,農地の集約もすすんでいないため、まぁぼちぼち、といったところのようです。

私のような町育ちで,地球温暖化、環境問題、食料自給率とか言うキーワードから,つまり頭から農業に関わっていく人々の陥りやすい罠は,メディアが流す絵になる風景,イメージで農業や,農法をとらえてしまうことです。
酒造りも米作りも大きなサイクルが回り続けているから維持できることで、静止画像じゃないんです。完全無欠の誰にでも即できる技法や、農法なんてありません。まとまった投資もいるし、利益が上がるまで持ちこたえる経済力もいります。私の所属するサービス業者団体は『原産地呼称認定制度』なんて、こじゃれたこと言ってますけど、元々の原産地が地域産業として成り立たなくなっちゃぁおしめいよ、です。サイクルを維持していくためにそれぞれの立場でやらなきゃいけないことがあるはずです。「働きマン」じゃないけど、スイッチ入れろよ、って感じです。

私たちサービス業者に取って正直、ぶっちゃけ言えば、日本酒は単なる一選択肢です。「日本酒がないならビールを飲めばよいのに。梅酒もあるしぃ、」ってなもんです。でもこんなマリーアントワネットみたいなこと言ってていいのかなぁ?って思いません?

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酒って農産物加工品なの。

私は自慢じゃないけど町の子なんで,日本酒と農業の絡み,なんて問題は最初の頃は想定の範囲外だったんですが、こう飲みまくっているとだんだん日本酒にかかわるミクロ&マクロの生態系って面白いなぁと思うようになってきました.ミクロは麹室やタンクの中のお話.マクロは蔵周りの気候風土,原料米の産地の気候風土、です。

最近は地元原料で醸した酒を実験的に商品化するところも増えてきましたから,県の酒造組合の試飲会みたいなところに行って,生産量の多い品種(山田錦とか五百万石とか,美山錦)を飲み比べてみると面白いです.
蔵ごとに使用酵母や調熟の仕方はちがうんですが、まとまった数飲むと,その地方の,その年の,その品種のくせ、が漠然とではありますが見えてきます.

よく専門家は,「日本酒はワインほど原料の差がダイレクトに味に影響することはない」なんていいますけど、言い換えれば高度な技術でダイレクトに影響しないようにすることもできる,というだけのことで,出てきたブツ(酒)の方が正直だな,って飲んでて私は思います.

生産者はムラをなくす方向で努力してくれてますが,こちとら、かなり大手さんから出てる定番商品であっても,ロッド違いで味違うなぁと思ってるんだから,「ムラはムラとしてそれを魅力的に見せるのがうちらの仕事なんだからあんまり固いこと言うなよ,」というのが本音です.

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米の成分分析

日本酒の世界というのはちょっと突っ込みを入れるとグニョングニョンした意味の分からない抵抗に切先をとられる世界です。こんにゃくトーチカというか、ナタデココトーチカというか....。私、日本人てもっとキチンと仕事する人種かと思ってましたけど、情報整理力のなさ、部署同士の連携の悪さ、やる気のなさ、を見ると、ここはイタリアの役所か銀行か?!と、妙な懐かしさを覚えます。

ともあれ酒米の成分の話ですが、等級審査とは別に成分分析ってのがあります。
特定名称酒に義務づけられている等級審査(整粒歩合)とは別に、酒の製造に適した成分かどうか?の分析もおこなわれているのです。私は分析表自体を見せてもらったことはまだないんですが、こういう分析を毎年積み重ねて(例えば、タンパク質の量が多すぎると酒に雑味が出やすくなるので)酒米部会などごとに目標値を設定してそれ以下になるように米の栽培の時点で、肥料の質やタイミングを調整するのです。ワインにおけるぶどうの含糖量ほどダイレクトに味に響く問題ではないのかもしれませんが、原料の質を語り、差別化していくための要素にはなります。

実のところ私たち一般人からすると、兵庫県特A地区山田錦の価値の裏付けなんてほとんど何にも公開されてません。【特A地区】という言葉が各メディアに露出してるだけで....。しかも飯米のランキングは各種団体で分立はしているもののかろうじて行われていますが、酒米、酒造好適米の統一的なランキングというものは行われていませんし、毎年の各地の等級審査結果がどこかに集積されている、ということもありません。ましてや成分分析においては分析してくれる機関も民間だったり、醸造試験所だったり....もう、やりっ放し〜の世界です。

ですから米づくりから関わってる醸造所が最近原料米の生産地を冠した商品を各種立ち上げていますが、「本気で差別化したけりゃ情報を整理しといてくださいよ。」ってサービスの立場からいわせてもらうと思っちゃうんですね。【原料米の生産地を冠した商品】なんてゴマンとある、って行ったら大げさですけど数十種類あるんですから。逆に言ったらその程度のことで差別化できるってことです。みんなが突っ込んでくるわけじゃありませんけど、備えがある、こだわってる、ってそういうことだと思います。

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滋賀県竜王町、ふたたび

9月28日に竜王町の町内田まわりに引っ付かせてもらいにいきました。
7/11に初めて伺った時は車でぐるぐるつれまわされて、なんだかよくわかりませんでしたが、今回は地図とつきあわせながら、大体の土地カンがつかめましたし、酒米部会の支部長の北川さんに前回同様くっつかせていただき、根掘り葉掘りお尋ねして参りました。

竜王町の山田錦の刈りは10/10前後になりそうです。
八月に急に暑い日が続いたから米の溝が深い、とか、心白がずれるとか、もうちょっとおけば溝は埋まるけど、かわりに米がかたくなって精米しづらいよ、とか、もうちょっと粘って上の等級を狙おうか?でも雨が恐いな、とか、
もう、リアルに酒は農産物加工品だなぁ、と思わされる会話がのらりくらり交わされてとっても刺激的。
収穫前の農家はほとんど勝負師の世界です。

ここは12人ほどの農家の方で構成される部会なので、自社田のみでやってるところほど事がすんなり分かりやすくは行かないところが面白い。土地にも癖があるように、一軒一軒の生産者の栽培法、人柄にもくせがあって、
それらの癖と、醸造家の技術、方向性がせめぎ合いがビンテージにあらわれます。

田んぼの見回りがすんで、松の司の事務所で社員の飯田さん(ちょっとお名前が不確か..ごめんなさい)
とお弁当を食べながらおしゃべりしました。

東条(兵庫県特A地区)の山田錦と、竜王町の山田錦って職人の側から見るとどう違うんです?

東条の米の方が柔らかくて溶けやすいです。味も出やすい。だから高精白がいきるんです。
竜王町のはかたいから55%精米くらいでいいかんじ。AZOLLAに使う無農薬米(除草剤不使用)は。雑草に栄養を取られるから、さらにもう一段固いです、とのこと。

いたずらに一般通念や、噂に踊らされずに自分の手もとにある材料(の性質)に誠実である、って奥が深いですし、惰性に落ちてる暇がありませんね。
ほかにもいろいろあったんですけど、眠さが極限なので続きは今度書きます。

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所酒造さん

26日、岐阜の揖斐川流域にある、所酒造さんに伺ってきました。
所さんは400石、一升瓶換算で40000本程度の出荷量のちいさな醸造所です。

出荷量の4分の3は地元向けの普通酒で、4分の1に当たる100石が先月当店で大好評だった純米酒【房島屋】です。麹米のにしほまれは聞き慣れない品種でしたので、お尋ねすると、酒米ではなく飯米ですが比較的大粒で、麹に適する品種として麹屋さんから勧められたんだそうです。
(所さんには麹室はなく、徳島の麹屋さんから乾燥麹の形で送ってもらっています。)

麹屋さん..?もやしもんの世界ですね。菌が肉眼で見えちゃうようなすごいジィちゃんとかが作ってるんでしょうか?じいちゃんが死んじゃったりしたら、麹が手に入らなくなるんじゃないでしょうか?
麹屋さんは後継者問題で困ってないんですか?と尋ねたら、「ちゃんと会社形式になっているところで、原料米や、ハゼ込み具合を指定して発注するのですが、品質はとても安定している、」とのことです。昔は麹屋さんも九州、新潟、など、それぞれの地嗜好、気候にあわせていくつか流派があったようですが、今は技術、情報の交換、いいとこ取りが盛んな現代的な業種だそうです。

杜氏の所優さんは梅錦で修行なさったので、その流れで酒母のたて方も以前は速醸でやっていましたが、今は高温糖化方式だそうです。この酒母タンクも小さなかわいいものですが初めて見ました。関東以北ではあまり見かけないたてかたですが、今回は奈良の篠峰さんでも見かけました。
最初の糖化の段階で60度近い品温をとるのでその時点である程度殺菌が出来、より安全に酒母ができるメリットがあります。いかに雑菌をゼロ近くにもっていくか、いろんな工夫があるんですね。

原料米は、優さんのお父上(社長)が福井出身のこともあり、福井のパールライスに福井産五百万石一等米を精米して送ってもらい使ってます。

あかね屋では料理とのバランスもあり、純吟の生を入れましたが、私個人としては65%精米の純米系も好きです。封切りの味わいはそれほど個性的、って訳じゃありませんが、日を追って出てくる味の経過が面白い、
味が開いていく、と言うより、澄んできます、火入れ熟成酒のはずなのに麹香が戻ってきたりする。
個人的にもうちょっとつきあって、確実に個性をつかみたい、とおもいます。

優さんは堅実、着実という第一印象の方ですが、お話ししてると堅実さと、直感というか、自分の感覚に対するオープンな態度がうまいこと同居しているな、と感じました。お若い方ですが、本能的に自分が必要とするものを嗅ぎあてていける方だと思います。やっぱりお会いできて良かった。

帰りがけに純吟のひやおろしと、純米無ろ過生を分けていただいて名古屋のワルンプアン、というエスニック料理店に持ち込ませていただいて料理との相性をみましたが、純吟はベトナム風生春巻きや青パパイヤのサラダ、純米は、ここの名物のエビトーストとすばらしい相性でした。

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糸魚川市 根知

取材の順序からいったらこの記事は最初にこなきゃいけないんですが、ブログをここに引っ越したせいで、荷物を整理するのに手間どってます。

ここは私が個人で最初に訪問した酒蔵、渡辺酒造店(根知男山 醸造元)がある土地です。なぜここにしたか?と言うと酒質に感動したことはもちろんですが、ここの社長さんが、口から生まれたのではないか?と思うほど能弁で情報公開に熱心な方だからです。米の栽培に力を入れてる蔵はほかにもたくさんあるんです。田酒、天の戸、竹の露、いずみ橋、秋鹿、神亀、東一...、でもここほどマメに情報をアップしている蔵はあまりないと思います。と言うわけで一般消費者が日本酒の生産現場の栽培、醸造、管理、販売、までコンパクトに全体を把握するのにはうってつけな蔵です。

根知男山は松の司と同じように地元の農家の方と契約して五百万石や、雪の精などを栽培してもらってもいますが、特徴的なのは5年ほど前から自社田にかなり本気の設備投資を繰り返して、高品位の五百万石生産を目指している点です。
ここの社長は醸造面では麹屋を担当していますが、職人として<高品位の>五百万石の性能に惚れ込んでらっしゃるのがお話ししてるとすぐ伝わってきます。また、根知人として風土と五百万石の相性も高く評価しています。代々続いてきた家業の後継者として、人材の確保、育成の必要性も深く認識しているため、地元社員の通年雇用に踏み切り、冬場は醸造、夏場は栽培のサイクルを<会社として>構築しています。農業に携わるものとしては、日本酒の<自然の恵み>という一面を消費者に再認識してもらうために、原料米の産地、品種、品質、の情報公開に力を入れています。

とにかく、渡辺酒造店が、なぜ、五百万石による醸造に力を入れているのか?中吟タイプに商品を特化させているのか?機械力の導入とその利用の仕方に、そして理論と行動に、破綻がありません。(人格的には破たんしている、と言う噂もありますが、私はそんなに恐い思いをしたことは今のところありません)

原料米へのこだわりのスタンスは蔵ごとに様々です。自社の酒質、スタイルを実現させるため、高品位、高性能の米を特定の地域に依頼して作ってもらっているところもあるし、品種の博物館、みたいにいろんな種類を栽培してそれぞれにあった醸し方をしているところもあるし、自社米をいろんな技法でいろんな味に持っていくところもあるし...。そういう意味で根知男山のこだわり全てのスタートは根知谷の自然にあるように思います。この風土にあった品種、その品種の個性を生かす栽培、醸造法、土地の魅力を正確に伝える販売法...提供法についてはまだ口を出さないでくれているので、私たちサービス業人は今のところ安心してられますが、つっこまれはじめたらおっかないですね。恥じない仕事をしていたいとは思います。

それにしても、お客さんの酒どころ認識、というのも世代によってまちまちです。6〜70代の人の多くは、例えば、新潟、って聞くと「あそこは米どころだからお酒もおいしいのねぇ」と言い、埼玉のお酒です、栃木のお酒です、っていうと「あんなところにうまい酒があるわけない」って言います。4〜50代の食にうるさい人たちは、「土地なんか関係ないよ、蔵の姿勢と杜氏のセンスだよ」って言います。私なんかは日本酒に関わりはじめて日が浅いくせに、「思い込みで決めんなよ、とにかく飲んでみろよ、でもって、うまいと思ったらその理由をてめえの足と、目ぇつかって調べろよ、時代は一巡りしようとしてるんだよ。」と心の中で思いながら、ニコニコしてるんですけどね。

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滋賀県竜王町

竜王町は琵琶湖の南東側にあります。滋賀県は琵琶湖を背負っているので、環境保全には大変神経質で、県の認定する特別栽培基準は国の定めるものより数段厳しくなっています。この地区の12軒ほどの農家の方々は地元の松瀬酒造(松の司醸造元)さんと契約して山田錦を栽培してらっしゃいます。

松瀬社長は「フロンティア東条21」にも所属なさっていますので兵庫県産山田錦での大吟醸などもお造りで、これも大変すばらしいんですが、私は個人的には、竜王産山田錦で醸した酒の方がずっと好きです。
今年から、ロンドンで行われているインターナショナルワインチャレンジにSAKE部門ができたんですが、そこで純吟、純大吟クラスのトロフィー(最優秀)賞を取ったのも<松の司 竜王産山田錦 純吟>です。

松の司の製品の多くは、若い時ものすごーく、堅いんです。堅いんですが、ゴツゴツした田舎っぽいかたさでも、透明でスペンとした堅さでもありません。味わいの内圧が非常に高いというか、非常に密度のある堅さなんです。
が、これを冷暗所で買ったのを忘れるくらい寝かせておくと...すごいことになるんです。
あぁ、松の司のすごさを表現する時にはどういうわけか言葉が出てこないのがもどかしい..。
あえていうなら、ダンテが煉獄をくぐり抜けて天上界でベアトリーチェに再会した時のような気分にさせてくれる酒...(こんな表現、利き酒師の試験でやったら、「アホか、」のひとことで落とされるなぁ..)になりますから、冷蔵庫に余裕のある方はぜひお試し下さい。

ともかく竜王町の方はラッキーなことにとても優れた醸造家を地元に抱えているわけなんですが、だからといって農作業が楽になるわけじゃないんです。前回は田植えから一か月半ほど経った7/11に伺いましたが、みなさん口々に雑草との戦いの大変さを熱く語ってらっしゃいました。松の司は標準の特別栽培法で作られた原料米使用酒のほかに、無農薬(除草剤不使用)栽培の米だけで作ったAZOLLAを作っていますが、この無農薬栽培というのがまた、除草剤不使用に切り替えた初年度はともかく、3年、5年、となると手に負えないそうです。「地球には優しいけど人間には厳しいなぁ」というのがみなさんの正直な意見です。

ここは農家の方の年齢層幅が広いので、すぐさま問題が顕在化することはないのかもしれませんが、
高齢化で農家の人の体力が落ちてくれば、機械を使いこなさないととってもやっていけませんし、機械を買うには資本がいるし、で、どうするんでしょうね?というのが素人の素朴な疑問です。
また、雑草を防ぐためのノウハウというのも、田植え直後に米糠を撒いた上で湛水し、日光と酸素を断って雑草を死滅させるとか、いろいろありはするんですが、それが効くかどうかは、天候のタイミングや、圃場の水持ちなどの関係で年によりまちまちで、完全無欠の技法などないのが、生き物、自然相手の仕事の難しいところです。
それから竜王町、と一口にいっても、車で回ってもかなりの広さで、基本的には砂利混じりの粘土質なんですが、水はけや、肥料の利き方は圃場によりかなりちがいます。それぞれの圃場にあったメンテナンスをしてできるだけムラをなくす方向に持ってきてもらわないと、醸造する立場としては大変です。

大変、大変、なんですけど、「独自なものでありたい」と願う栽培、醸造、のプロ同士の連携があっての松の司です。

前回見た成長期の稲たちが、収穫直前のこの時期どう成熟しているのか見物です。今回は醸造する側から見た竜王町の米の特徴についてもうちょっとお話をうかがってきたいです。

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酒米の品質について

早いもので、酒米の早稲品種の産地では早くも等級審査がはじまっているようですね。
利き酒師の資格取得者の方々なら、周知のことですが、酒米の等級には特上、特等、一等、二等、三等、と5段階あります。本醸造以上の特定名称酒クラスの酒は三等以上の品質の米の使用が義務づけられていますが、裏を返せば、本醸造未満の酒には格外の米、米粉が使われているととでもありますし、さらに穿っていえば、米粉でも清酒はできる。ということです。ありがたいことですね、来るべき食糧難の時代に備えて、秘術(おっと、技術って入力するつもりだったんだけど本音が出ちまったい)の研鑽に励んでくれている会社がある、ということです。

ともかく、等級審査に話を戻すと、現在の米の審査基準は整粒歩合、の一点だけです。
粒に胴割れがないか、青米(未成熟米)がないか、欠けがないか、色沢がいいか...整った米粒の割合でクラスが分かれます。

物理的に粒がそろっていると、緻密さが求められる仕込み時に吸水にしろ、蒸すにしろ、とにかくムラがなく作業が快適で、醪にしてからの経過もとても扱いやすいと言われています。
一方で、ある東北地方の蔵ではむしろ青米くらいの方がもろみがよく溶けるので、安全に端麗な酒ができると聞いたことがあります。(これも実はどっちが鶏か卵か分かんないんですが、青米ができやすい土地だからそれにあわせてそれを活かす醸造法が発達したのかも分かりません。)

ですから、原料米の等級が上がればあがる程、質のいい酒を造りやすくなるんですが、仕込みの規模とか、風土や、技法によって、使いやすい米の状態って少しずつ違うみたいです。穀検さんや農協さんがやってくれる現在のような明確でシンプルな審査基準は醸造家にとっては有効なんでしょうけど、私たちサービス業者にとっては、つっこみがたりない足りないというか、お値段が高くなることの対外的なアリバイつくりくらいの意味しか今の段階ではありません。


なぜなら、醸造家さんの側から自分ちの「この」クラスの酒を造るのにはこの産地の、この品種で、この品質がベスト、っていうようなセンシュアルで動かしがたい理由、の公開がまだまだなされていないからです。「弘法筆を選ばず」って職人さんたちにとってはそれが理想なのかもしれませんが、弘法にいい筆持たせたらよけいすごいものができるんですから、素直に自分のこだわりについてもっと価値観の公開をしてくれりゃいいのに、と、サービス業者の視点から見るとちょっとじれったいんですけど、う〜ん。奥ゆかしい人が多いのか、ビジネスとして公開しない方が賢いな、と踏んでいるのか....どっちなんでせふねぇ

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宇宙船地球号のお客さん、じゃなくて乗務員よ。

食べ物に対する意識って、人によっていろいろですね。

ガソリン代わり(燃料)って考える人もいるし、子供がアレルギーだったりする人は、アレルゲン表示に敏感です。
おいしいものが好きで、いい仕事が好きで、評判の店をチェックしまくる人もいるし...。総じて、食べ物のおいしさ、安全性という評価基準はよく見聞します。でも供給の安定性、っていうことになると、供給されて当たり前、っていうか、どっかノー天気です。

でも、現実には力を持ってる大きな商社(コングロマリットっていうんですか?)は世界のみなさんに持続的に、安全な食物を供給するために働いているわけじゃありません。
その一方で、農産物の生産というのは人為的に管理しきろうとするとものすごくコストがかかるものですので、大多数の生産者は、お天気次第のばくちみたいな条件下で働いているわけです。

ものすごく高度に発達した食料供給システムの土台が結局は、ばくちで支えられている....。生産者の層が厚ければ...、(百歩譲って)ばくちであってもいいのかもしれません、でも現実には生産者の層は世界的に見てもどんどん薄くなっていってる。

こういったことの恐さは、一か所の生産地を訪れただけでは分かりにくいんですがいくつか訪ねていけばおのずと見えてきます。おいしくって、安全な農産物をー安定的ーに生産するには、それぞれの土地、風土に居着いた、有能で、研究熱心で、ある程度経済力を持った人が必要なんです。

日本の恐さは、こういった人たちが急速に高齢化して、あとが育ってない、ってことです。私たち消費者は、サイクルが途切れてしまう前に、今育ちつつある人と一緒に産地を守っていかなきゃいけません。マジで。

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信州情熱和酒の会

信州情熱和酒の会が今日、正式に立ち上がるそうです。

信州の5軒の酒屋さんと6軒の蔵元が中心になって、長野の酒の品質向上、信州のほかのブランドとのつながりを強化して、信州の酒のブランド力を高めたりするのが目的らしいです。蔵元の中には明鏡止水の大澤さん、
最近の注目株の佐久の花さんが入ってます。

ここまではよくある話かな、と思すが、佐久は農家の方達も熱心で、酒米部会の方々がこの会のメンバーの蔵元と一緒に新潟の根知男山に視察に行かれたりしています。(根知はほとんど長野ですからね)

農家のかたがたが比較的高齢なので、持続的なサイクルが定着するまで、保つのか?
それから、農家のかたがたの意識が品種、品質にはおよんでいても、『名』産地、として名を打ち出していくんだ、というところまで及んでないらしいのが不安なんですが、こういう横断的な連携が、空中分解せずに、有機的な連合(オーガニゼーションですね、まさしく)として育ってほしいなぁ、と思います。

個人や、一企業で生産、醸造、販売戦略、を兼ねるのは大変です。

いいモデルになってほしいです。私はまず、産物としての酒をチェックするところから始めるしかないんですけどね。

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こんなに好きにさせといて...

私はサービス業の人間なので、酒を選ぶときの最初の条件は
おいしいか?
店の料理と響きあうか?
お値段が手ごろか?です。

でも、でもですよ、お客さんにたいする責任として、 再会可能である。ていうのも大事な点です。 これはいままでよく言われている味の再現性、などとはちょっと違います。 私は味、質感、などは再現を越えて、毎年、更新されていなくてはいやな方です。 思い付きの手ブレは許せませんけどね。

ですからここで言いたいのは、もっとマクロな問題です。 このおいしさをキープしていくために,どんな手立てを講じているのか? 酒を作り続けることができるように,経済的に,物質的に,人材の面で、ちゃんと手を打ってる蔵かなぁ、 というのはとても気になります。

「こんなに好きにさせといて、急にいなくなるなんてひどい、」というような思いは お客さんにさせたくありません。希少なお酒はいつでもある、ってわけにはいかないものですが,すくなくとも、来年の今月今夜、さ来年の今月今夜、にはきっと店にいれてます。といえるような関係でいたいのです。

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原産地呼称制度

各地の県で、特産品を独自に認定して産地の差別化、ブランド化を計ろう という動きはここ10年くらいの間に随分でてきました。 でも、正直言って、なかなかお土産物レベルを越えない。
今年になって、国がジャパンブランドっていうんですか?輸出を視野にいれた、 産業の認定、振興、を一般向けに発表しだしていますが, 現場では、いままで独自に活動していた省庁、天下り機関、現地の団体、の 思惑がそれぞれで、コマコマしたブランドが互いに足を引っ張りあっちゃってる 場面もあるようです。

そういうお上主導の認定と違って、消費者の立場に立って、分かり易いカタチで、 各地の酒の個性をグループ化していこう、という動きが私の所属するサービス業者 団体のなかにあります。それが原産地呼称認定制度です。

まだまだ試案の段階です。
私は個人としてもまだまだ原産地呼称制度というものがどれほど危険で、 同時にどれほど可能性を秘めているのか、見切れてません。

でも、日本酒の原料は米です。農産物です。成分中もっとも大きな比率を占める水も、 浄化程度の小細工はできても、井戸が枯れてしまってはどうにもならない。 大きな視野をもった環境の保全、世代の連続が必要です。

うまい!スゴい!と唸らされる酒、一本一本は、その一本を身銭をきって飲む人の目を、 広くて、深くて、豊かな、そしてとっても手間のかかる愛すべき産地に向けさせる窓です。

蔵から紹介される、産地を訪ねていきたいとおもいます。 今月は、滋賀の竜王町にいきます。

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