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冬水たんぼ at 根知

先週末、ほぼ一年半ぶりに新潟の根知にいってまいりました。

このブログを前からお読みの方はご存知のことと思いますが、この蔵は約7年ほど前から原料米の安定確保のため米造りに携わりはじめています。私は3年くらい前から時々お邪魔させていただいているのですが、この間、ジェットコースターというかメルトダウンと言ってもよいほどの農業と酒造りを取り囲む情況変化の中で着実に未来への布石を打っているのには毎回驚かされます。

今回の訪問の目的は、この冬から試験導入され始めた【冬季堪水&不耕起移植栽培】についてお話を伺い&田んぼを見せていただくことです。

最初に用語の説明をザックリさせていただくと、

現代の一般的栽培法では稲刈りを終えたあと、地面を起こして地表の稲藁を地中に鋤き込み田んぼを乾かして冬を越し、春になってから田んぼに水を張ります。鋤き込まれた稲藁は分解されてゆくゆくは窒素などの肥料分になるのですがこの方法ですとメタンガスや硫化水素など稲の生長を阻害する物質をちょうど稲の成長期にあたる時期に放出してしまいます。

一方、【冬水田んぼ=冬季堪水】の場合は稲刈りのあと地中に根を残したまま田んぼに水を張りなおし、地表の稲藁共々水中で分解させます。水中ではその稲藁を栄養源に多量の藻類が発生し、光合成をしながら水中の酸素を増やすため稲にとっての有害物質が発生しにくいという利点があります。

また【不耕起移植栽培】というのは文字通り耕すことをしない栽培方法です。稲刈り後の稲藁の鋤き込みもしなければ、田植え前の田起こしもしません。地中に残った前年の根っこが朽ちて水や空気の通り道になるため、数年この栽培法を続けると、この根っこの遺物が積み重なってスポンジ状の土壌ができ地力がつくと言われています。

また、この栽培法では苗をきたえることで、稲が本来持っている環境適応力を最大限に引き出すことと、施肥のタイミングが非常に重視されています。(タイミングをはずさないことで肥料、農薬使用量を必要最低限に押さえるのです。驚くべきことに有機肥料の代表格である畜糞堆肥を使いません!)


生物の多様性に支えられて、その土地その土地が自力で自らを耕し土壌を作り上げていく、その仕組みの歯車の一つとして稲作が組み込まれている..とすら言ってもいいかもしれません。


蕗の薹がぽこぽこ吹き出た畦を歩きながら、この蔵のモットーである【根知谷産五百万石の特性を生かした酒づくり】はより一段深化して、【根知谷の環境特性を生かした五百万石づくり】というレベルに踏み出そうとしているのだな、と思いました。

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生産地を訪ねて」カテゴリの記事

コメント

さすが 根知の社長さんだけありますね

 単なる「有機栽培で作られた酒米仕込」なんて謳っている
 蔵は全国あちこちで見かけるようになりましたが、ここの
 やってるレベルを聞いてしまうと、「地酒」の概念すら変って
 しまいますね。
 このバイタリティーには、いつも感服します。

投稿: 松木 津々二 | 2009年3月18日 (水) 07時36分

連作って
想像以上にその土地に負荷を掛けているのですね。
その負荷をどう処理していくのかで
その土地の性格が変化をする。
過保護な子から
自立のできる野生児の子まで・・・
その親御さんの苦労は知らないと
解らないまま過ぎてしまうのですが
知ってしまった以上は
誰かに伝えなくてはという衝動に駆られますね。

投稿: STR19 | 2009年3月18日 (水) 07時47分

松木さん、19さん

初めて根知にお伺いしたころは、近隣の谷の畜産家から牛糞を
譲り受けて堆肥にし、田んぼにいれていました。
が、【確かに地力はつくんだけど、他所から栄養補給を続けることで収量を上げるのがいいことなのかな、それより、その田んぼの地力の範囲内の生産量に押さえて、土地を収奪せず持続可能なサイクルにもって行くことはできないかな...という思いがあります。】と、おっしゃっていました。

実のところ、現在のほとんどの畜糞は有機畜産によるものではありません。

畜産のための餌のほとんどは輸入穀物ですので、昨年のように穀物価格が高騰すると廃業者が増え安定確保がむずかしくなりますし、フードマイレージの視点から見ると、他所の土地で作られた窒素分が田畠だけでなく、川や近海に過剰に蓄積しつつあることが問題になりつつあります。

また、予防のために与えられる各種の薬がどのような形で残留しているかまだまだ不明な点が多いのも事実です。

一口に有機肥料、といっても、その土地土地の地力や分解能力にあった施肥でないと、「これは漢方薬だからドーピングじゃありません...」という屁理屈をこねてるのと同じことになってしまいます。


投稿: うこき | 2009年3月18日 (水) 10時11分

冬季湛水不耕起栽培って最先端ですよね。
以前新聞の特集で読みました。
起す事のエネルギーは確かに環境にも負荷をかけています。
手間を沢山掛ける事が良い農業だという錯覚は確かに
あるのだと思います。
しかし狭い日本で単位面積当たり収量を上げる事が
必要だった事や世界的に見れば飢餓の脅威が差し迫った中で果たして自然という贅沢を享受していいのか
という疑問もあります。
となれば米を一杯磨く吟醸の存在意義まで踏み込まなければならないかもしれません。
フードマイレージも含めてトータルの環境負荷での
バランスを取るという事なのかなと思います。
文章からの印象だけなのですが。

投稿: 堺 | 2009年3月18日 (水) 11時24分

堺さん、

はじめまして。
>飢餓の脅威が差し迫った中で果たして自然という贅沢を享受していいのかという疑問もあります。

たしかにそうですね、ただ、わたくしが岩澤さんの提唱する【不耕起移植栽培】についての本を読み,また,根知を見学した範囲内での感想をいわせていただくと,【不耕起移植栽培】というのはナイーブな意味での自然農法ではないな,という気がいたしました。

むしろ、稲の環境適応力を苗の段階から最大限に引き出すことで,農家が無駄な(過剰な)労働と投資をせずに着実に収量を確保し利益を得続けるための栽培法、というかんじです。

ですから、耕作こそしませんが,苗づくりにかける投資と,神経と労働は大変なものです。

「豊かな収穫を得たい!」という農民の本能を満たすために,あらためて稲と言う植物の生理的欲求にそう形に栽培法を見直した..そういう技法のようです。道楽,とか精神的贅沢,という気はいたしませんでした。まぁ、実際どうなのかは今後の追跡調査でおいおい明らかになるだろう,と思っております。


なお、私のブログや,新聞、ニュースで流される情報はごくごくおおざっぱなものですし、ひとくちに不耕起と申しましても幾つかバリエーションがあります。【根知】で導入するのは岩澤さんの提唱するパターンです。

本当に興味をお持ちなら,
創森社刊/岩澤信夫著/【不耕起でよみがえる】か、
農文協刊/岩澤信夫著/【新しい不耕起イネつくり】
をお読みになることをお勧めいたします。

投稿: うこき | 2009年3月18日 (水) 16時36分

upあれ?堺さんってもしかして奈良の堺さんですか?

や〜だなぁもう,そちらの方が本職じゃぁないですか..。えらそうな返事を書いてしまった...(汗)。でも,これが一般人の私から見た正直な感想なんですよ。

投稿: うこき | 2009年3月18日 (水) 16時53分

奈良の堺でした。
本職(農業)にはまだまだ程遠いです。

とっても興味はあるし、今後の酒屋は農業と切り離し
出来ないと思っているので、先進のお蔵さんには正直
頭の下がる思いです。

どうやって農家の方を巻き込んでいくか、耕作地の狭い
奈良(御所)では頭の痛い問題です。
少しずつ田圃を借りて栽培地を広げている段階です。

周りとの共存?協調?の中でまだまだその域には達することは出来ませんが諦めず理想は探し続けていきたいと
思います。

理想と現実の狭間でただ出来る事は、酒を醸す事みたいな状況ですね。

投稿: 堺 | 2009年3月18日 (水) 17時44分

堺さん

>どうやって農家の方を巻き込んでいくか、

根知はおそらく御所よりず〜ッと住民の高齢化,過疎化の進み方が早いのだと思います。

農家を巻き込むというよりは巻き込まれている,巻き込まれつつ次の段階のための布石を打っている,感じに私には見えます。

後継者のいない農家が田畠を荒らすのに忍びなくて蔵に頼み込んでくるのですから,人手の面でも,契約にかかわる資金面でも大変です。あんな狭い谷ですが,文字通り急速なリ.コンストラクションが起きているのだな,と思います。

御所はどうなっていくのでしょうね?どなたが中核になって再構築されていくのでしょうか?ドキドキしますね。

投稿: うこき | 2009年3月19日 (木) 01時20分

お久しぶりでございます。
で、本題なんですが。
錫チロリ「かんすけ」のサンシンの社長さんから伺った話しなんですが、神奈川のいづみ橋さんと千葉の五人娘は、岩澤先生のグループに指導を仰いでいるそうです。
ちなみに、サンシンの社長さん自身も千葉に不耕田の田んぼを持っているそうです。

投稿: mmmmolioooo | 2009年3月19日 (木) 22時17分

mmmmoliooooさん

おひさしぶりです〜。
いずみ橋さんが昨年から挑戦なさっているのは知っていましたが,
五人娘さんもさもありなん,というかんじですね。

それにしても【不耕起栽培】という名称が一人歩きしているのはいかがなものか?とおもいますね。
岩澤さんの不耕起移植栽培は環境適応力を高めた苗づくりに支えられたものですから,不耕起だけでは語れないものを感じます。

投稿: うこき | 2009年3月20日 (金) 01時18分

ワインの世界で語られている【自然派(ビオ)ワイン】同様、
何となく”耳障りの良い言葉”だけが一人歩きする懸念、
ワタクシもすでに感じております。

ちなみに【根知】に関しては、数少ない本物だなぁ…と、
理解しているつもりです。

(…この件については、あえてコメントを控えようと
思っていたのに…ついつい書き込んでしまいました(汗))

投稿: STR02 | 2009年3月20日 (金) 01時43分

岩澤先生の理論は、他の多数の自然農法と違い、生業としての稲作を重視しているところが、決定的に違うところじゃないかと。
冷害を克服するだけでなく、昨今全国的に報告が増えつつある高熱障害も克服出来る農業技術ではないかと思っています。
あと、岩澤先生のグループとは違う方達の指導のようですが、上喜元の佐藤杜氏も不耕起栽培しています。

投稿: mmmmolioooo | 2009年3月20日 (金) 09時20分

mmmmoliooooさん

>生業としての稲作を重視
そうそう!だからリアリティがあるんです。
あと、佐藤さんもなさっているとは存じませんでした。
蔵には伺ったことがあるんですが、田んぼはまだです。
自社田なんですか?

投稿: うこき | 2009年3月20日 (金) 11時14分

上喜元は、(ご存知かと思うのですが)戦後5蔵が合同して出来た会社で、現在もそれぞれで株を分け合っています。
不耕田は、対外的には自社田ということにはなっていますが、佐藤社長所有のなので、自社田というのは正確じゃないのかも知れません。
「太古米 出羽燦々」と表記されたものが、不耕田の出羽燦々です。
太古活性農法に関しては、苗についてとか、冬期湛水についてとかは不明です。

投稿: mmmmolioooo | 2009年3月20日 (金) 12時36分

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